世界に類を見ない超高齢社会を迎えるわが国は、現在団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年を目指して改革を進めており、その大きな柱である地域包括ケアシステムの構築は、改革のピークと言われた2018年度診療報酬と介護報酬の同時改定を終えて、地域包括ケアシステムの基本である医療と介護の連携が大きく進むことになった。これまでに改革のツールも出そろっているので、改革の後半は地域性に応じたまちづくりの実践が中心となる。
一方、当初高齢者を対象とした地域包括ケアシステムは、障がい者や子どもを含む全世代全対象型に進化と深化を続けており、本格的な超高齢多死社会のピークとなる2040年に向けた取り組みも必要となってきた。2040年に向けては止まらない少子化に伴う生産年齢人口の大幅な減少も起きるため、より複雑で総合的な対策が必要となる。
日本医師会は、地域包括ケアシステムを構築するためには行政と医師会が車の両輪となることが必要であり、かかりつけ医には多職種連携のまとめ役になることが求められていると考えている。その実現を図るために、まずかかりつけ医機能の充実・強化を目的として2016年4月より「日医かかりつけ医機能研修制度」を開始した。
しかし、地域包括ケアシステムの構築を通じたまちづくりにはかかりつけ医個人を対象とした研修のみでは不十分である。地域で実践するには郡市区医師会としてどのように取り組めばよいか、都道府県医師会はそれをどのように支援したらよいか、さらに全世代全対象型地域包括ケアにはどのように対応したらよいかなどについて、先進事例や最先端の研究報告などを学びながら、自らの実践に反映させていく取り組みを繰り返して行うことにより、初めて地域性に応じた地域包括ケアシステムを構築することが可能となると考えている。
国民が安心して超高齢社会を迎える、また安心して子育てができるように、官民を超えた幅広い関係者が力を合わせて、全国すべての地域でその地域性に応じた地域包括ケアシステムを構築するために、「日本地域包括ケア学会」を設立しようとするものである。